何かが生まれた日
世界広しといえど、寒空の雪原でキャンプしながらリハをするバンドは少ないだろう。
周りには誰もいないし、隣人に壁ドンされる心配もない。スタジオの深夜パックより安上がりだし、だからここで思いっきり焚火をしながらギターをかき鳴らしてやるのだ。
そんな心身ともに開放された空間においても、別に熱い思いのたぎりを何かにぶつけるようなドーテー臭いパンクではなく、かといって恋人にただ日頃の感謝の気持ちを連呼するいい人が歌うさわやかなポップスでもなく、骨の隋までヒネクレた大人が手探りでわけのわからないコードを使ってあーでもないこーでもないと酒を浴びながら曲をくみ上げていく。
所詮ROCKが世界を変えるなんて思っちゃいないけれど、焚火にくべた雑木の薪の煙みたいに、誰かの目を沁みさせながら影も形もなくどっかに飛んでいってしまえばいい。そんな感じ。
おしまい
関連記事